みなさん、「陰ヨガ」という言葉を聞いたことがありますか。陰ヨガとは、簡単なポーズを長い時間キープするヨガのこと。難易度が低いから、ヨガを始めたいけど、難しいポーズが取れるか心配という人や、体調が悪い時でもヨガをしたいと思っている人にぴったりです。今回は陰ヨガの魅力やアーサナをご紹介します。

陰ヨガとは

陰ヨガとは

陽ヨガとの違い

ヨガと一言で言ってもその種類は実に豊富。その中で、陰ヨガと対で語られることが多いのが、陽ヨガです。陽ヨガとは、体をダイナミックに動かすヨガのこと。体幹を鍛えたり、柔軟性や代謝を高めたりする効果があります。ある程度の経験がないとできないアーサナも多く、初めての人にはハードルが高く感じられるかもしれません。体を大きく動かすため、正しい方法で行わないと、体を痛めてしまう恐れもあります。
一方の陰ヨガは、座りポーズや寝ポーズなど誰にでもできる簡単なアーサナが中心です。アーサナを、3〜5分という少し長い時間キープすることで、リラックス効果が得られるヨガです。ヨガの経験がない人や、体力に自信がない人など、誰でも簡単に取り組むことができます。また、動きも小さいため、ケガの心配もあまりありません。

陰ヨガの歴史

陰ヨガは、アメリカのヨガ指導者のポーリー・ジンク氏により生み出されました。陰ヨガの指導は、1980年代から行われています。
ヨガは、1990年代にブームを迎えますが、この時は、シェイプアップや筋力増加など、ヨガのもたらす肉体的なメリットばかりが注目されていました。陽ヨガを実践する人が多い中、慣れないポーズで体を痛めたり、陽のエネルギーが強くなりすぎたりする人も増えてきました。
2000年代に入ると、この反動で、ゆったりしたアーサナで、自分の精神と向き合える陰ヨガが注目され始めました。インターネットの台頭により情報量が増え、ストレスが溜まりやすくなったという時代背景もあり、陰ヨガの実践者がどんどん増えていったのです。

陰ヨガの種類

ゆったりとしたアーサナを長時間キープするヨガ全般を陰ヨガと言いますが、その中でも際立った特徴があるものは、陰ヨガとは別の名前がついています。

リストラティブヨガ

陰ヨガ リストラティブヨガ

リストラティブヨガは、「回復のヨガ」と呼ばれています。ブランケットやブロック、ベルトなどを用いることで体の負担をさらに軽くし、深いリラックス感を得ることができるヨガです。寝ポーズがほとんどで、筋力や柔軟性は必要ないため、ヨガ経験の有無に関わらず、幅広い年代で楽しむことができます。

ヨガニードラ

陰ヨガ シャヴァアーサナ

シャヴァーサナと呼ばれる休息のアーサナを取りながら、ガイドの声を聞き、体の緊張を解いていくヨガです。瞑想の一種ですが、音のない中で行う一般的な瞑想と違い、声が聞こえる分集中すべき対象がはっきりしているので、比較的簡単に行うことができます。ヨガニードラを自宅で行うためのアプリや動画もあります。

陰ヨガの効果

陰ヨガの効果とは

リラクゼーション効果

陰ヨガのいちばんのメリットは、深いリラックス感を得られることでしょう。呼吸やアーサナに集中することで、日常生活の悩みから解放される感覚を味わうことができます。アーサナが簡単なので、上手にできずにストレスになることもありません。体がなかなかリラックスできない場合は、意識的に深い呼吸をしてみましょう。体がリラックスすることで、心をさらにリラックスさせることができます。

自分自身とゆっくり向き合える

陰ヨガを習慣にすると、自分自身の体の変化に敏感になることができます。日や時間帯によって体の動きやすさは変わってくるもの。陰ヨガでは、アーサナが簡単なので、体の動きの違いに気付きやすくなります。陰ヨガでは努力は不要。無理に体を動かそうとせず、その時その時のありのままの体の状態を観察しましょう。
また、陰ヨガはアーサナが簡単な分、意識を体だけでなく心にも向ける余裕が生まれます。陰ヨガの「陰」とは、下降や鎮静のエネルギーのこと。陰ヨガを行うと気持ちが静まり、今の自分の心の状態を冷静に観察することができます。

柔軟性が高まる

体に負担の少ない陰ヨガですが、意外にも体の柔軟性を高める効果があるんです。陰ヨガでは、同じアーサナを長く取ることで、筋肉だけでなく、体深部にある関節や筋膜をもほぐすことができ、体の奥からしなやかな状態になることができます。体が硬い人の中には、力の抜き方が分からず、体の動きに無意識にリミットをかけてしまっている人がいます。陰ヨガではアーサナの途中で体の力が自然と抜けていくので、普段以上に柔軟性を高めることもできます。

腰痛や肩こりの解消

体の柔軟性を高める効果がありポーズのホールド時間が長いので腰痛や肩こりの解消効果が見込まれます。

下半身ダイエット効果

陰ヨガには、下半身のむくみを取り、スッキリさせる効果があります。リンパには体内の老廃物を回収する役割があります。リンパの流れが滞ると、体に老廃物や余計な水分が溜まってしまい、下半身がむくみ、太ったように見えてしまいます。下半身のリンパの流れは、足の付け根にある「鼠けいリンパ節」の滞りを取り除くことで、スムーズになります。陰ヨガには、股関節を広げたり縮めたりするポーズが多く、鼠けいリンパ節に適度な刺激を与えることができます。股関節を大きく動かしますが、特別な柔軟性は必要ありません。自分が気持ちいいと思うところでキープすれば大丈夫です。

陰ヨガのアーサナ

バタフライ


足の裏を合わせて座るバタフライは、股関節や背中の柔軟性を高める効果があります。膝が地面につかなくても大丈夫。脚を前の方に出すことで、体の負担を減らし、長時間のキープでも辛くなくなります。背中は丸めてかまいませんが、腰は立てて行いましょう。前屈した時に呼吸が浅くなるようなら、クッションやブランケットをおでこの下に入れ、そこに体を預けるようにしましょう。

キャタピラ

脚を伸ばして前屈することで、背中や腰の柔軟性を高めてくれます。背中のコリや腰痛改善にも効果のあるアーサナです。陽ヨガでは背中を伸ばして前屈しますが、陰ヨガでは背中を丸めて行います。肩甲骨を開くようにすることで、背面全体がリラックスします。背中が伸びている感覚があれば、膝は曲げたままでもかまいません。

ドラゴンのポーズ

股関節やそけいリンパ節に適度な刺激を与えることができます。脚の付け根には肝臓の経路も通っているため、肝機能向上にも効果があります。膝に痛みを感じる場合は、タオルやブランケットを膝の下に入れましょう。下半身にアプローチをかけるアーサナなので、上半身の姿勢は比較的自由です。膝に手をついて上半身を起こしてもいいし、地面に手をついて上半身を倒してもいいです。楽な姿勢でキープしましょう。

シールのポーズ

背中から腰にかけて適度に刺激を与え、下半身をリラックスさせるアーサナです。腕はまっすぐに保ちます。上半身を一生懸命反ろうとすると、腕に過度な負荷がかかってしまうので、注意します。手を前に歩かせると負荷が減りますが、それでも辛い場合は肘から下を地面につけましょう。

キャットテイルのポーズ

体をツイストすることで、内臓機能の活発化やストレス解消に効果があります。手や脚が地面から離れないようにします。ヨガのワニのポーズでは、脚を体と直角になるようにしますが、キャットテイルはそこまで脚を上げる必要はありません。体をねじると呼吸がしにくくなるので、意識的に深い呼吸を心がけましょう。

スネイルのポーズ

肩や首のこりをほぐすアーサナです。腰を手でサポートしながら、ゆっくり脚を上げていきましょう。アーサナ中に首を左右に動かすと危険なので、一点を見つめるようにします。伸ばした脚に緊張を感じる場合、膝を曲げてもかまいません。陰ヨガの中では少し負荷が高いアーサナなので、まずは短時間から始めてみましょう。

陰ヨガの注意点

陰ヨガの注意点

陰ヨガも、普通のヨガと同様静かな場所で行うことが基本です。もし音楽を流すなら、スローテンポのものや自然音が入ったものにするといいでしょう。集中しやすい環境を作るために、部屋を薄暗くしたり、アロマを焚いたりしてもいいでしょう。陰ヨガはアーサナをキープすることで効果が出るので、途中で気が散らないような工夫が必要。できればスマホの電源も切っておきたいですね。

陰ヨガは体への負担が少ないですが、それでもキープ中に痛みや違和感を感じる場合があります。その際には決して無理をせず、アーサナを中止しましょう。
ヨガウェアの中は、露出が多いものがありますが、これは陰ヨガにはあまりおすすめできません。陰ヨガでは体の動きが少ないため、肩やお腹が出たウェアだと体が冷えてしまいます。そのようなウェアで陰ヨガを行う場合は、ブランケットや上着を活用し、体が冷えないように注意しましょう。

おわりに

一般的なヨガのイメージとは全く違う「陰ヨガ」。未経験でも、インストラクターの指導がなくでも気軽に取り組むことができます。パワーが欲しい時は陽ヨガ、リラックスしたい時、疲れている時は陰ヨガと上手に使い分け、ヘルシーな毎日を送ってくださいね。